ソフトウェアファースト

ソフトウェアファースト 『責任がケイパビリティを創る』

背景

 ひと昔前までは、ソフトは外注という日本文化だった。依頼する案件の分野が狭く、同じ技術を有するソフト屋さんの密度が高かったので、作業単価が安く、外注したほうがペイしたからだ。近年、IT分野がクラウドや人工知能、データ分析、サブスクリプションといったように急速に拡大したことにより、技術者のスキルセットが分散しプログラマの単価が上がってきている。そこで、ソフトの内製によりDXを推進を優位に進めるソフトウェアファーストという概念が注目されている。

ソフトウェアファースト

提案者:及川卓也さん

東京出身。早稲田大学理工学部卒。専門だった探査工学に必要だったことからコンピューターサイエンスを学ぶ。
 卒業後は外資系コンピューター企業にて、研究開発業務に従事。現在で言うグループウェア製品の開発や日本語入力アーキテクチャ整備などを行う。その後、数回の転職を経験。OSの開発、ネットワークやセキュリティ技術の標準化などにも携わる。プロダクトマネジメントとエンジニアリングマネジメントという製品開発において軸となる2つの役職を経験。
 2019年1月、テクノロジーにより企業や社会の変革を支援するTably株式会社を設立。2011年の東日本大震災後に、災害復興支援や防災・減災にITを活用する活動を開始。Hack For JapanおよびIT×災害コミュニティ、一般社団法人情報支援レスキュー隊の共同発起人。

Amazon 著者紹介文より

概要

 ソフトウェアがビジネスの中心を担い、インターネットがあらゆるビジネスの基盤となった今、日本企業はどう変化すれば生き残れるのか?すべてはIT活用を「手の内化」することから始まる。

  • DXの本質を「IT活用を手の内化すること」と定義し、できる限り開発を内製化するのが理想。
  • 内製化とは、企画、開発、運用に至るまでを社内で行うことを言う。
  • 100%の内製化ができなくても、制御権を保持すること。
  • 何を作るかを決定し、どのような技術(フレームワーク )を用いて作るかを決定し、開発の全体を指揮する。

内製と外製

 ユーザ企業がいくらサービスを外部Sierに委託して構築しても、サービス収入(入り金)よりもSierへの開発委託費及び運用費(出金)のほうが多くなってしまい、利益はSierが持っていってしまう。一度、そのSierに発注してしまうと、そのSierでないと修正できない状態になってしまいベンダーロック状態となるからである。要するに、Sierからするとそのユーザ企業は他に発注できないことがわかっている!

多重請負

 さらに、SierをTier1として月単価200万すると、そこからTier2,3,…6といったように、月単価10〜20万ずつ下がって外注を繰り返す。最後はフリーランスが月単価50万程度デコーディングしてたりする事例もある。ベンダ責任などあってないようなもの。それほどみんな、責任を負いたくたくない。

ソフトの手の内化

 上記のようなネガを克服するためには、Sierへの発注をやめて、自社で開発すると、技術を手の内化できる。一時期、社内工数オーバー分のみを外注したとしても、コントロール権限を握ったままの状態であれば、ベンダロック状態にはならずに、自社に戻すこともできるし、他のもっと安いベンダに変更することもできる。

まとめ

 ソフトウェアの実質責任者はプログラミングした人である。その上流工程の人のドキュメントは多くの場合は、緩くてはっきりとした記載になっていない。なぜなら仕様書を書いてる人はプログラミングできないことがほとんどであり、プログラマが一意に解釈できる要件定義書なり設計書というのは期待しても完成されない。だから、プロジェクトの締め切り納期が迫ってくると、上流の設計書のプログラマが行間を埋めて設計&コーディングして帳尻を合わせる。だから、プログラマが一番成長するしインテリジェントが高まっていく。プログラミングという成長の機会を社外に出すということは、IT技術の進化にキャッチアップしていける人が資産であるこの時代には、大きな損失になる。

 であるにもかかわらず、ユーザ企業でソフトウェアファーストを実施する会社はまだまだ少ない。なぜなら自分に責任がくるから。そして安易な外注に流れていき、その会社はいつまでも成長の機会を損失する。そんな外注だけのエンジニアでいることはとても危険だと自覚できる人も少ないのが現状なのだ。

独立不覊のためのスパイラル転職戦略
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