資産形成をするためには経済の理解は必須。経済のことをものすごく理解しやすく解説している本を見つけたので紹介します。いきなり現在の姿を見ると複雑だけど、歴史から順番に学ぶと本質的なことが見えてきます。
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目次
この記事について
この記事の対象読者
- 資本主義経済についての理解を深めたい人。
- 投資がうまくいってない人、失敗した人。
- 投資をしたいけど不安がある人。
この記事から得られること
- 経済に対する基本的な部分が深く理解できる。
- 資産形成の成功率を高めることができるようになる。
著者
ギリシャの経済学者、政治家。2006年頃からアメリカのサブプライムローンを引き金とする金融危機を予測し的中させた。2015年、ギリシャの経済危機時に財務大臣を務め、EUから財政緊縮策を迫られるなか大幅な債務帳消しを主張し、世界的な話題となった。長年イギリス、オーストラリア、アメリカで経済学を教え、現在はアテネ大学で経済学教授を務めている。2016年にはDiEM25(民主的ヨーロッパ運動2025)を共同で設立し、その理念を世界中に訴えている。
内容
第1章 なぜ、こんなに格差があるのか
- 市場と経済は同じものだと思っている人は多い。だがそれは違う。
- 農作物の生産によって、はじめて本物の経済の基本になる要素が生まれた。それが「余剰」。農作物の余剰が、人類を永遠に変えるような偉大な制度を生み出した。
- 文字は余剰を記録するためのものだった。
- 借用証書も仮想通貨も共通することがある。どちらも「信用」が必要。
- 債務と通貨と信用と国家は固く絡み合っている。債務がなかったら農作物の余剰を簡単に管理できない。債務が生まれたおかげで通貨が流通するようになった。
- 経済について語るとは、つまり、余剰によって社会に生まれる、債務と通貨と信用と国家の複雑な関係について語ることだ。
- 余剰がなければ、国家はそもそも存在しなかった。
- 支配者たちはどうやって自分たちのいいように余剰を手に入れながら庶民に反乱をおこさせずに権力を維持していたのだろう?
- 支配者だけが国を支配する権利を持っていると庶民に固く信じさせればいい。自分たちが生きている世界こそが最高なのだという考えを植えつければいい。
- 宗教の裏づけがなければ支配者の権威は安定しなかった。だから何千年にもわたって、国家と宗教は一体となってきた。
- 余剰を蓄積するには権力の集中がいつようで、権力が集中するとさらに余剰が蓄積され富が支配者に偏っていった。それが寡頭制。
- 格差社会に疑問を持ち続け、戦略的に怒り続けてほしい。
第2章 市場社会の誕生
- 心が満たされること(経験価値)を「いいこと=グッズ」といい、「商品=コモディティ」とは異なる。「商品」の値段を交換価値(市場価値)と呼ぶ。
- 経験価値と交換価値とは対極にある。いまどきはどんなものも「商品」だと思われているし、すべてのものに値段がつくと思われている。
- 献血が有償の国では、無償の国よりもはるかに血液が集まりにくい。お金につられる献血者は少なく、逆にお金を支払うと善意の献血者はあまり来なくなる。献血は、経験価値が、交換価値よりある少ない例。
- 多くの場合、交換価値は経験価値より上だとみなされる。
- 自分のことすら市場価値で測ってしまう。
- 市場社会における人生は、経済的な物差しでしか理解できない。
- 土地も道具も持たない人間は、労働力を売って生きていくくらいしかない。苦労を商品にするというわけだ。
- 産業革命によるグローバル化は、「偉大なる矛盾」を生み出した。「思いもよらないほどの富」と「言葉にできないほどの苦痛」が共存する世界ができあがった。
- 「市場のある社会」が、「市場社会」に変わったことで、何かが起きた。お金が手段から目的になった。人間んが利益を追求するようになった。
- 利益の追求が人間を動かす動機になったのは、借金に新たな役割ができたことに深いつながりがある。
第3章 利益と借金のウェディングマーチ
- ローン契約の場合、見返りに何か交換価値のあるものを余分に受け取れることが歌詞での行動の動機になる。それが利子。
- 借金が生産プロセスに欠かせない潤滑油になった。
- 封建制度のもとで貴族階級が支配的な地位を維持できたのは、政治と軍隊と法律と習慣のおかげだった。
- 産業革命の原動力が石炭ではなく、(競合に勝つための)借金だった。こうして、一握り人たちが富を蓄積し、それ以外の人たちは耐えがたいほどの悲惨な生活を強いられるようになった。
- 市場社会では、すべての富が借金によって生まれる。
- プロテスタントを牽引する存在となったのは商人であり起業家だった。プロテスタントの教義では、利子付きの借金は神の計画の一部として受け入れられた。
第4章 金融の黒魔術
- 現代の経済は生き物の生態系と同じで循環しなければ崩壊してしまう。
- 市場社会が突然に、金融機関が原因で循環能力を失うときがある。
- 金融機関は巨大な力を持ち始めた。大規模な循環を起こす力を持つと同時に、いきなり循環を止めて破滅を引き起こす力も持った。
- 起業家は将来実現しそうな交換価値を、未来から今に引っ張ってきていると解釈できる。
- 銀行は、貯金があってもすぐに使う予定のない人たちと貯金がなくお金を借りる必要のある人たちの間に立って両者を結びつける。
- ただし、実際には、お金を貸すときには、預金者が預けたお金から化しているのではなく、「魔法のようにパッとだす」。 ⇨ 債務が作れる。
- 「銀行があまりにも簡単にお金を作り出すことができて、恐ろしくなる」と言った経済学者もいる。
- より多くの人により多くのお金を貸すことで、経済に回るお金は多くなり銀行の懐も(利子と手数料で)潤う。
- 急激な産業革命の成長を支えるために、借金の額が爆発的に増大した。
- 借金は市場社会に欠かせない。借金がなければ利益も生まれない。利益がうまれなければ余剰もない。
- 利益と富を生み出すその仕組みが、金融危機と破綻をも生み出す。経済を前に進めていた循環のプロセスが今度は逆に回りはじめる。
- 経済が破壊的な循環にはまってしまったら助けになるのは国家しかない。どの通過にも中央銀行が存在し、そこから膨大なお金はやってくる。
- 中央銀行は普通の銀行にとっての最後の貸し手になる。
- 行政を担う政治家は、銀行家から大きな支援を得て当選していることが多い。銀行家が政治家を必要とするのと同じくらい政治家も銀行家を必要としている。
- 銀行を監督する立場の役人や政治家が引退後に銀行に天下るケースは多い。
- 銀行が与えてくれるものが経済を動かす。それが借金。
- 債務免除について。倒産してもその事業にかかわる所有物だけが没収される。事業を所有する個人の預金や自宅や持ち物まで没収されない。これを有限責任という。
- 枝を燃やして山火事を救う。返済h可能な借金に永遠に囚われていたら、企業も個人も国家も復活できない。返済できない債務は国家に帳消しにしてもらうしかない。国家が介入してくれてはじめて債務の霧が晴れ、回復への道を歩むことができる。
- 市場社会において銀行は公的債務がなければ生きられない。公的債務がなければ市場社会は回らない。
- 国債は金融の世界では最も流動性の高い資産と言われる。国債は金融システムの潤滑剤として歯車を回し続けてくれる道具。
- 銀行は増幅器でしかない。市場社会が不安定である根本原因は別にある。
第5章 世にも奇妙な労働力とマネーの世界
- 集団全体が楽観的なら楽観的な憶測が現実になる。集団全体が悲観的なら悲観的な憶測が現実になる。
- 市場社会で利益を出そうともがいている企業家は、ほかの多くの人たちがどう考えているかを憶測し、その憶測に動かされる。
- 労働市場は、経済全体の先行きに対する楽観と悲観に左右される。
- 市場社会の中にある最も基本的な「労働市場」と「マネーマーケット」の奥底には悪魔が潜んでいる。この悪魔たちが景気の回復の妨げるためにあくせくと動いている。悪魔とは人間らしさそのもの。
- 労働市場とマネーマーケットを動かしているのは、参加者の楽観/悲観である。
- 賃金が下がれば失業がなくなり、金利が適正レベルに低下すれば貯蓄が雇用や投資に変わるといったシンプルな世界は、このような悪魔のせいで実現しない。
- どんなに賢くどんあに知恵があっても自分(資産)を守りたいという短期的な衝動に勝てない。あとで自分の首を締めることになるとわかっていてもつい衝動に従ってしまう。
第6章 恐るべき機械の呪い
- 自動化が猛スピードで進んでいる現代は、事業が成り立たない程に価格が下がる可能性がこれまでになく高まっている。
- 労働者の抵抗が自動化にブレーキをかけ利益の破壊を防ぐ。
- 労働者が組合を通して団結し、労働時間の短縮と賃金の値上げと人間らしい職場環境を求めることは、イカロス症候群の防御策になる。市場社会の根底にはそんな矛盾が隠れている。
- 人間性の喪失や労働力の安売りに抗う無限の力が人間にはある。
- 災いと福はつねに対になっている。経済が定期的に厄災に見舞われると、その度に人間の労働力は復活する。倒産や経済危機によって、少なくとも当分のあいだ人間の労働力は安くなり、生き残った企業は高価な最新型のロボットのかわりに失業者を雇い入れるようになる。経済危機は回復の前触れであり、回復は経済危機の前触れなのだ。
- 自動化の増加によって全体の収入の中で労働者に向かう割合は減り、ますます多くの富が機械を所有する一握りの人たちのポケットに入るようになる。
第7章 誰にも管理されない新しいお金
- 通過の購買力はその生産コストとは何の関係もなく、相対的な希少性または潤沢さによって決まる。
- 物に対して貨幣の量が相対的に減ると、全ての物価が下がる(デフレ)。逆に市場の貨幣総量が増えると、その反対のこと(インフレ)が起きる。
- どんな経済でも、借金のコスト(金利)は、物価の予測に左右される。インフレに向かうかデフレに向かうかの予測で変わる。
- 経済は自然とちがって、われわれがどう思うかに影響され、揉まれ、形作られる。
- 貨幣経済は、それが続くと人々が信頼できるかどうかにすべてがかかっている。
- 通貨を通過たらしめているのは「信頼」。
- 過去の金持ちたちは、政府が悪弊(インフレ)を流通させたときには、中央銀行の政治的中立性と政府からの独立を求めて運動を起こしマネーサプライ権限を政治家の手から奪おうとしてきた。
- 国家は公的債務を返済し続けるために税金をさらに徴収しなければならなくなる。市場社会では債務と税金とマネーサプライが固く結びついている。
- 経済的に発展した民主主義国の中央銀行はほぼすべて、表向きは中央銀行は独立していることになっているが、実際には債務と税金ほど政治に左右されるものはない。
- ビットコインの参加者たちが仮想通貨に熱狂するのは、それが既存の政府野犬いに抵抗する存在だからだ。
- もし銀行強盗が金庫を破って大金を持ち出したとしても、貯金は法律で守られるがビットコインは守られない。
- 国家に紐づかない仮想通貨の最大の弱点は、危機がおきたときにマネーの流通量を調整できないことにある。
- 仮想通貨は早朝がきまっていることで、危機が起きやすくなる。次に危機が起きたらそれを和らげるのが難しくなる。発行総量をふやせないため、再膨張(リフレーション)に持っていけない。
- マネーサプライを調整することで、バブルと債務と経済成長の行き過ぎを防ぎ、同時にデフレと景気後退を退治できる。
第8章 人は地球のウィルスか?
- 交換価値が経験価値を打ち負かすようになって市場社会が生まれた。
- 交換価値を全てに優先させる社会は、環境保護をとんでもなく軽視するようになる。
- 市場社会は人間を節度のない愚か者にしてしまう。
- 経験価値より交換価値を優先する市場社会から環境破壊を守るために、かろうじでまだ残っている経験価値を一つ残らず交換価値に変えるという考えは矛盾しているかもしれないが、こうした考え方がいまでは主流になりつつある。
- 企業に炭素の排出権を与え、その権利を取引できるようにした。
- マネーサプライの規制と管理を政治から切り離そうとすれば、経済が行き詰まり危機が起きた時の回復が妨げられる。
エピローグ 進む方向を見つける思考実験
- 本物の幸せとは無知と反対の何かが必要
- 本物の幸福を味わえる人生とは、何者かになるプロセスだ。
- 満足と不満の両方がなければ、本物の幸福を得ることはできない。満足によって奴隷になるよりも、我々には不満になる自由が必要。
- 世界と衝突し、葛藤を経験することで人は成長する。
- 市場社会とは満足のみを目標としている。今の経済は人間の欲する目標を手に入れるのに適していないどころか、そもそも手の届かない目標を設定したシステムなのだ。
- 失業と不況は競争不足が原因だとされてきた。そこで規制緩和によって競争を促進することが解決策だとされている。
- 経済学者がせいぜい世慣れした哲学者のようなものだと白状してしまったら、もはや市場社会を支配する人たちは経済学者を歓迎してはくれなくなるだろう。
- 人を支配するには、物語や迷信に人を閉じ込めて、その外をみさせないようにすればいい。だが一歩か二歩さがって、外側からその世界を見てみると、どれほどそこが不完全でばかばかしいかがわかる。
- 市場社会の求めに応じて行動するか、あるいは頑なにあるべき社会の姿を求めて行動するか、つまり、社会の規範や決まり事から一歩外に出て世界を見ることができるかどうかが決定的な違いになる。
所感
この本を読んでから、BloomBergやロイターニュースといった金融経済の情報を読むと、よく理解できるようになりました。金本位制が終わり法定通貨の発行上限がなくなったため、昔は実体経済:金融経済=9:1であった関係が、今では逆転している。大量のマネーはあるルールに従いその状況でリスクリターン効率のいい場所(株、債券、金、コモディティ、など)を求めて移動する。ルールの中核となるのが、インフレ率と政策金利。CPI上昇(下降) ⇨ 米国FRB金利上昇(下降)⇨ 株価下落(上昇)⇨ 為替ドル上昇(下降)の基本関係、など。最新の難しい経済記事を読む前に、本書を読むことで基礎知識がグッとつくので猛烈におすすめします。
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